クルマバナ
シソ科 トウバナ属
 
学名 Clinopodium chinense ssp. grandiflorum var. parviflorum
クルマバナは多年草。

日当たりの良い、竹薮の縁に生えていたのが初見だった。花序は数段葉腋についていた。
この様子を、輪散花序と言う様である。
『原色日本植物図鑑 保育社』や『神奈川県植物誌』等、トウバナ属の解説の中に 『仮輪』
という単語が出てくる。その意味の解説は無いが、数個の花が輪についている状態を仮輪
と言うようである。
『原色日本植物図鑑 保育社』によると
●小苞は、線形で萼の中部以上ある。
●萼は通常紫色を帯びる。腺毛はない。
●茎は方形で20〜80センチ、疎らに下向きの毛がある。
●葉柄は5〜15ミリ、葉身は3〜7センチ、幅1.5〜3センチ。
●葉の両面脈上には毛がある。
●花冠は0・8〜1センチ、雌蕊は1本、雄蕊は4本で下側2本は長い。
●分果はやや扁平な円形。

また、ヤマクルマバナとの区別点として、通常萼は紫色を帯びず開出毛が多く、イヌトウバナ
に似た姿としている。トウバナの苞葉は、線形ではあるが極小さいので見分けられる。


『神奈川県植物誌』により補足すると
●花序は、茎の中部以上の葉腋毎に、半球形輪散花序をつける。
●萼の上唇は3歯、下唇は2歯があり、いずれも鋭利に尖る。
●小苞は線形で小花柄より長く、小苞には長い剛毛があるが、腺毛は無い。
●萼には13脈があり、長剛毛がある。
●葉裏面には疎らに腺点がある。
●全体の毛については、無毛から多毛まである。

観察した萼筒の毛にも変化があり、撮影した個体が図鑑とは違っていたりすると同定に支障
を生じてしまう・・・・。


『広島県植物誌』では学名 C. chinense var. parviflorum としている。シロバナクルマ
バナ学名 C. chinense f. albescens も報告されている。『神奈川県植物誌』には、上唇
の3歯が針芒状のものを ニッコウクルマバナ学名 C. chinense f. setilobum
 とある。
『広島県植物誌』にはこれらは掲載されていない。

クルマバナの学名出典は『原色日本植物図鑑 保育社』、『神奈川県植物誌』による。


*画像転載禁止*


クルマバナ=06・9・14



輪散花序が少ないタイプ

(1段)花冠は0・8〜1センチほどの唇型花。
長い上側の紅紫色の葯嚢が見えている。
左小窓の葯は弾けて白色。

クルマバナ=05・10・12

(2段)花冠の喉部を見ると、下唇の出っ張り部分の毛が見える。
雌蕊は1個、雄蕊は4個。うち下側2個は短い。

クルマバナ=05・10・12

(3段)蘂はピントが甘いが、長短が良くわかる。
筒状2唇型の萼は、上唇は3歯、下唇は2歯で開出毛がある。
線形の苞葉は小花柄よりずっと長く、萼筒の中間ほどの長さがある。
縁には長い開出毛がある。他のトウバナ属との見分けるポイントになると思う。

クルマバナ=05・10・12

(4段)撮影したこの個体は、全体にか細くなよなよとしていたが
方形の茎の緩い稜上や葉柄の毛は、下向きに生え白く長く良く目立っていた。

クルマバナ=05・10・12

(5段左上)葉表。脈上には毛がある。
この個体の葉縁には開出毛が目立ち鋸歯は5〜6個ある。
(5段左下)葉裏。脈上には開出毛がある。
(5段右)葉裏面の拡大。脈上の開出毛と、腺点が疎らに見える。

クルマバナ=05・10・12




(6段)左右同一の葉裏の様子。
撮影する葉の角度で、これほど違って見えるので
撮影には気をつけなければならない気がした。

クルマバナ=06・9・9



輪散花序が半球形で密にある(普通のタイプ)


(1段)半球形の輪散花序が、
中部以上の葉腋に数段つき良く目立つ。

クルマバナ=06・9・14

(2段)密に付いた輪散花序を、下方向から見たもの。
萼筒や萼裂片の開出毛が良く目立つ。
線形で萼筒の中部あたりまである苞葉も確認できる。
茎の毛は下向きに生えている。

萼筒には緑色の脈が見えているが、トウバナ属には13脈がある。
クルマバナ=06・9・14

(3段)この個体は同じ場所に生えていた別のものである。
比較的萼筒や萼裂片に毛が少ないタイプである。

萼はこのように紫帯び腺点はない。
クルマバナ=06・9・14

(4段)茎下部あたりは毛が目立たないものが多い。
葉は対生している。

クルマバナ=06・9・14

(5段左上)葉表。葉の縁や葉脈には毛がある。
(5段左下)葉裏。葉脈上の毛が確認できる。
(5段右)葉裏の拡大。
脈上の毛は目立つが、腺点は殆ど確認できないタイプだった。

クルマバナ=06・9・14




(6段)葉身は80センチにもなるそうであるが、
30〜40センチ程度で、山道の脇に沢山群れて生えていた。
ボタンヅルの葉が写りこんでいる。

クルマバナ=06・9・14
(く)  FLORA  HOME Last update 07・10・7 06・9・14




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