イタチハギ
マメ科 イタチハギ属
別名 クロバナエンジュ 
 学名 Amorpha fruticosa L.

『原色日本帰化植物図鑑 保育社』
によると、北米原産の落葉小低木。別名はクロバナエンジュ、ロシヤハギ。
大正初年に渡来。戦後砂防用として日本各地に植栽されたものが、広く野生化。花や果実が無いとクララと見
誤り易いが、草本のクララに対し、イタチハギは下部の茎は木質。花や果実は特異で似たものは無いとある。
イタチハギの幹は高さ1〜4メートル、灰褐色。葉の質は薄く、6〜20対の小葉よりない、下面には疎らに毛が
ある。花序は多数の黒紫色の花からなり、長さは6〜20センチ。花は殆ど無柄で長さは4〜5ミリ、萼の先は
やや不同に5裂。最下の裂片は他より狭くて長い。花冠は黒紫色、光沢は無く、旗弁のみよりなり、旗弁は下
面に向かい筒状に巻いて雌蕊、雄蕊を包む。雄蕊は10個、花糸は其の基部だけで合着、紫色で葯は橙黄色。
雌蕊は1個で花糸には疎らに毛がある。果実は長さ1センチ、1個の種子を入れ熟しても裂けない。花期は夏。

『日本の帰化植物 平凡社』によると、平地や山地の新開地。産地自然植生周辺の裸地や道端、海岸や川原
の裸地などに生える落葉性低木。樹高はふつう1〜3メートル。葉は奇数羽状複葉。側小葉は6〜15対で、小
葉は普通卵形〜長楕円形。先端は中肋が突出して微突形となる。4〜7月に枝先に1〜3〜5この総状花序を
出す。花は多数密集して付き、濃い紫色。長さは5〜7ミリ、旗弁があって翼弁と竜骨弁を欠く。豆果は扁平な
狭楕円体で長さは5〜8ミリ、表面に多数の蜜腺がある。大正初期に観賞用として移入され、庭園に植栽された。
戦後に砂防用や生垣用に移入されたものが逸出したとある。花や果実の無い時は、ハリエンジュやクララに似
ているが、ハリエンジュは小葉がすくなく側小葉は4〜8対。クララは惣村であるとある。

『神奈川県植物誌 2001』によると、頂小葉をもつ羽状複葉で、小葉はややずれて付き下面に腺点がある。ハ
リエンジュやクララと間違われることがあるが、この腺点が良い特徴になるとある。豆果には水ぶくれ状の腺点
があるとある。



☆花の詩 メモ☆


イタチハギは国道や県道の法面に沢山生えている。これは法面緑化や砂防用に植栽されているのだそうだ。道
理で、山間部の高い道路の法面や小高い丘にある新興住宅街の高い法面で見かける。初めて見たのは、旧日
本鋼管の社宅が沢山建っていた伊勢が丘という福山市東部の町。紫紺の花に黄色の葯が、あまりにも綺麗で
感激したが、直に開発されて全てが伐採されてしまった。もう二度と見られないのではと、とても残念だった。とこ
ろがその後彼方此方で目にすることになり、その理由も判ったところである。花や果実の付いていない時期の葉
は、ハリエンジュの幼木などとは確かに良く似ているが、私見ではあるがハリエンジュよりもイタチハギの葉の方
が細い。クララはさらに細い葉で、見慣れるとそれ程見紛うと言うほどではないなぁ〜と感じたが、いざ花のない
ものを見ると、やはり迷ってしまうが、腺点は確かに見分ける最大のポイントになる。



出典・参考図書
●『原色日本帰化植物図鑑』 長田武正著 保育社
●『神奈川県植物誌 2001』 神奈川県立生命の星・地球博物館
●『日本の帰化植物』 清水建美編 平凡社



*画像転載禁止*



●全体像を大まかに観察。開花期(5・20)から果実期(9.11)。

生えていた場所は山際。道路をはさんで西側は住宅街。その年にこの山は開発されて一帯はすべて住宅街
に様変わり。ツクシイバラなどもこの近辺に生えていたが、すべてなくなってしまった。

イタチハギ=撮影04・5・20






(2段)紫紺の旗弁に黄色の葯が良く目立つ。
イタチハギ=撮影04・5・20


(4段)豆果は1センチほど。鞘の部分には気泡のような突起の腺点がある。
種子は1個あるそうだ。確認していない・・・・。

イタチハギ=撮影04・5・20

(5段)葉は奇数羽状複葉。長さは20〜30センチ程度。小葉は、1 x 3センチ程度
で全縁、葉先は中肋が突出して突起になっている。小葉はややずれて付いている。
表からも腺点が確認できるが、ハリエンジュやクララとの区別点らしい。

イタチハギ=撮影04・5・20

(6段)ハリエンジュやクララに似ているが、ハリエンジュは葉幅が広くもっと大きい。
クララは逆に葉幅が狭いと私は思う。

イタチハギ=撮影04・5・20



●花を中心に観察 06・5・29撮影

福山市の或る中学校の土手に生えていた
高さは10メートルもある法面に2〜3株生えていた。反対側の崖の法面にはクララが群生している。

イタチハギ=撮影06・5・29







(2段)花は7〜8ミリで巻いた状態。花弁は旗弁のみ。竜骨弁も翼弁も退化しているそうだ。
ほかのマメ科の花とは少し違う。萼には気泡のような腺点がある。
雄蕊は10個で基部は合着。雌蕊は1個。

イタチハギ=撮影06・5・29

(3段)少し先が曲がった褐色の雌蕊には白い毛がまばらに生えているのが確認できる。
この部分の特徴はこのサイトを仕上げる段階で知ったため、
鮮明な画像では無いので、また見る機会があれば撮影しておきたい。
萼の先端は5裂、縁に白い毛があるようだ。花柄が確認できるが

イタチハギ=撮影06・5・29





●葉や幹を観察 05・8・13撮影

その崖の法面は枡状にコンクリートで養生されており、法面一面に群生していた。
一見ハリエンジュの若樹に似ている。

(1段)2メートル程度で法面いっぱいに生えていた。
イタチハギ=撮影05・8・13

(2段)花序はこの程度の開花状況だと、あまり目立たない気がする。
やはり黄色の葯が飛び出ると、抜群のコントラストで目立つ。

イタチハギ=撮影05・8・13

(3段)長い果序である。垂れさがることもなく直立していた。
左手で抑えて撮影したもので斜めになっている・・・・。

イタチハギ=撮影05・8・13

(4段)成熟している果実先端はとがっている。水ぶくれの様な腺点があると図鑑に表現
されているがまさにその通りである。熟しても裂開しないそうである。

イタチハギ=撮影05・8・13





(5段)中間辺りの幹の様子。茎には小さなぶつぶつがある。
皮目かもしれないが不明・・・・。

イタチハギ=撮影05・8・13

(6段)幹には白い伏毛が密生している。右上に見える葉柄の基部の小さい物が副芽。
大きいほうが主芽。茶色い線形の髭のような物は小托葉。

イタチハギ=撮影05・8・13

(7段)幹は直立して枝を出していない。下部の幹の様子。
イタチハギ=撮影05・8・13

(8段)葉表。裏側の腺点が透けて見える。
イタチハギ=撮影05・8・13

(9段上)葉裏は白っぽい緑色。腺点が見える。
(9段下)裏面全体、主脈上には伏毛がある。

イタチハギ=撮影05・8・13

(10段)葉軸の表側は、低い溝がある。小葉の基部には小托葉がある。
イタチハギ=撮影05・8・13
種別(い)  科別(ま) FLORA  HOME
Last update 06・10・28 広島県






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